ロッチの不定期連載~明太子への道第二章~
~前回までの流れ~
明太子食いたい⇒買えない⇒作ればいいんじゃね?⇒本来の明太子ではないでかい魚卵を用意⇒孤軍奮闘⇒実食(今ここ)
という訳で。
ビッグビジネスまであと一歩。これで味と体調に異変がなければ夢の明太子パーリナイを迎えることが出来るわけです。
しかし思えば、冷凍から始まり2週間もかかった「生もの」スローフード。なんのチェックもなしにガブリと食いつくのは、流石のスグロさんでも戸惑います。
まず食す前に、人間の忌避本能としてその能力を賜ったとされる嗅覚さんに頼らさせていただきましょう。
くんくん・・・。
お!うん・・・うん・・・ん?
・・・なんか・・・発酵臭がする・・・。
いや、勘違いしないで欲しいのだが、決して腐ったような匂いではない。塩辛や麹のような、むしろ華やかであり、(多分)人体には影響のない匂いだ。少なくとも全く不快ではない。
日本酒に漬けたこと。そして魚卵の皮が厚いが故、本漬け期間を長く設定した事によって発酵が進んだものとみられる。
ただ一つ言えるのは、不快ではないのだが、決して明太子の匂いではないという事か・・・。
やや不安ではありますが、切り分けてみましょうか。

お!?
なんだよー!なかなか明太子っぽいじゃん!断面図はもう、スーパーで売ってる例のアレじゃん!
これは匂いと比べ、俄然期待が持てます。一度ここで気持ちをフラットに戻すといつまでも食わなそうなので、この勢いで試食を試みます。
画像は無いのですが、シンプルに焼き明太子、たらこパスタ、オンザご飯の3つで試しました。
まず焼き明太子。
これはひよったと思ってくれて構いません。
加熱という工程を踏むだけでこんなにも安心感を得れるのか・・・。バクっといきましょう。脇にはハイボールもスタンバイ済みです。
おっ・・・!?
すげー!!思ったより明太・・・ん?あ。あー。
残念!
味はかなり近い。近いけど、後半鼻に抜ける香りは、完全に明太子ではない。ただ、不味くはない。むしろこれはこれで珍味と言える。ハイボールも・・・まぁ合わない事はないかなぁ。でもこれにはホップの強い、香り苦み共に強いビールの方が合いそうだ。
つまりクセが強いため、酒にもそれなりのクセが必要になるんだろう。チンタオやオリオンのようなあっさりしたビールだと、多分発酵臭に瞬殺されます。
とは言え、こいつは匂いさえなければ味、食感共にかなり明太子に近いと分かりました。
さぁ・・・問題は次からっすよ・・・。生食・・・。
今だから正直に言うけど、もともとコレ生食用じゃないんすよ・・・。
新鮮な真鱈の卵なんて、東北や北海道じゃなきゃ手に入らないんだもの・・・。近所で手に入れられるのは加熱用がせいぜいなんだ・・・。
せめて半加熱状態のパスタからトライするか・・・。
バター、生クリーム、真鱈卵で敢えてシンプルにたらこパスタをつくります。
恐る恐る口に運ぶと・・・あれ?
うめーーー!!!
おぉ、予想外、思ったよりうめーぞコレ!
やや前衛的過ぎる香りをバターと生クリーム選手が優しく包み込み、発酵臭のソレはむしろ美点として強化され、純和風たらこパスタとして完成をみている。からすみのパスタに近いものがある。
これはパスタのくせして日本酒が合いそうだ。青じそを加えると更に昇華するでしょう。加熱時に問題となった発酵臭を、見事にリカバリーしてくれました!
これはいける!いけるぞ!
このままラスト!完全生食にトライだ!
丼によそった白飯に、一切れ豪快に乗っけて、いざ!!
・・・。
・・・。
・・・。
うーん・・・。
なんか、コレじゃない感が強い・・・。
見た目完全に明太子で、脳もそう判断して、でも口に運んだ瞬間違う匂いして、それでも味は明太子で、脳が判断を戸惑うのが分かる。
俺に「コレなぁに?」って聞いてくる。いやテメーが考えろ。
決してまずい訳ではない。決してまずい訳ではないのだ。ただ、これを明太子として食すのはいささか乱暴過ぎる。これはもう、別の食材として利点を探すのが正解な気がする。
さっと湯がいた小松菜にまぶすとか、ちょっとクセ強めのチーズなんか相性が良さそうだ。厚揚げに合わせてもいいかもなぁ。
なんやかやと作った今回の明太子、かなり課題の残る結果となりました。
皮が厚いとは言え、本漬け期間をもっと短く出来ないかとか。
加熱用を生食する(しかも2週間経ってから)というだけで心理的負荷がやたら高い事とか。
まだ試行錯誤しきってないからアレだけど、真鱈の卵が明太子化しない理由は、なんとなく分かった気がする。
ただ次回新鮮な真鱈の卵が手に入ったら、またトライしてみよう。課題もそこに至る過程も、とても楽しかった。
出来ないと決めつけてやらないこと。
意味ないと決めつけてやらないこと。
分からないからと何もしないこと。
そこから一歩踏み出さなくても全然余裕で生きていけるけど、たまにはみ出してみると、楽しい発見があるかもですよ。
ただこれは真似しないように。加熱用は必ず加熱しましょう。
エイトビートフロンティア担当 スグロ