ロッチの初恋の人にごめんなさい
ナヴァール王国の若き王、ファーディナンドは言った。
宮殿を学問、芸術の最高峰たるアカデミーとしよう。恋煩いなどもっての他。女性との交際の一切を絶ち、ただひたすらに学問に耽るのだ。
女性と話す事も禁じよう。いや、宮殿に足を踏入れる事すらも叶わぬとする。
シェイクスピア『恋の骨折り損』。
宗教仕事趣味問わず、何かを突き詰める際に必ず出てくるのが、『禁欲』だ。
やれ食事制限やら、睡眠時間を削っての荒行やら、徹底的に身体を苛め抜くやら。その目的を達成する為に、時に人は手段を選ばない。その中でも特にタブーとされやすいのが、恋愛関係だろうか。
それはひとえに恋という魔力の凄まじさ故だろう。
我を忘れ、すべき事を忘れ、ひたすらに相手を想ってしまうという行為は、確かに道を進むにあたって障害となりかねない。
しかしそう簡単にはね除けられるものではないよな。人が生活する上で、それは必要なものなんだから。極論でもなんでもなく、『恋をするな』というのは、『息をするな』と同義くらいなものなんじゃないだろうか。
恋をしつつ為すべき事を為すのが、今の人の世の常ですね。
ちなみに上に書いたファーディナンドも、誓いをたてた直後に恋に落ち、どうすれば誓いをたてたまま恋を成就させる事が出来るか、奮闘する事になる。痛快な喜劇です。大好きです。
我を忘れるような恋、皆さんは経験した事ありますか?
私は中学生の頃初恋の人に告白し、OKされ付き合い、しかし向こうからフラれ、その後諦められず4度告白するという都合5度告白スーパーめんどくさいファイヤーをかました事があります。
あれは相手からしたら相当にウザかっただろう。恋は盲目、我を忘れると言えば、確かにその通りだった。我を忘れるどころか、相手の気持ちすらも忘れていた。今さらだけどごめんよ初恋の人。
そんな事があったんで、今まで公演のお知らせもあの娘にだけはしてなかったんだ。しかし、今回は少しばかり勇気を出して、声をかけてみようかと。何故かって?野暮な事を。つまりだな………
てめーがフッた相手は今、板の上で最高に輝いているんだと見せつけてやる為さ!フッた事を後悔するくらいにな!
最高に輝いた俺を見て、きっと彼女はこう言うだろう。『かっこいい!後光が差して直視が出来ないわ!もう一度付き合って!』と。そこで俺は少し斜め上を見上げながらこう返す!『少しばかり時計の針が回り過ぎちまったようだ。ユーとは付き合えないぜ、グッバイ マイ ラブ!』と!
え?ださい?ノンノン、一周まわってこれがかっこいいんだぜ!
え?意味がない?正解!
まぁ冗談だけど、恋の骨折り損を読み、ふと初恋の人を思い出した今、せっかくなら一声かけてみようかね。
今さら好いた惚れたじゃないけどさ、初恋というのはただそれだけで、特別
足り得るものなんだ。